目の前で人が倒れた際の対処法として、人工呼吸は不要とされることが多くなっています。人工呼吸の必要性やポイントを見ていきましょう。
アメリカ心臓協会AHAや、日本版救急蘇生ガイドラインにおいて、心肺蘇生として人工呼吸を省略しても良いと言う記載が見られるようになりました。実際に救命講習を受けた場合にも、「人工呼吸を省略しても救命率に差は見られない」という情報を教えられるようになっています。
人工呼吸ではなく胸骨圧迫をした上でAEDを使用することが、傷病者を助けるための手順とされているからです。
勘違いされがちですが、心肺蘇生法として人工呼吸が全くの不要であるというわけではなく、あくまで「省略しても良い」という認識が必要です。人工呼吸ができない場合は、胸骨圧迫だけでも構いません。
人工呼吸は人の口と口で行うため、相当な抵抗を覚える人もいます。近年では感染症予防対策の観点からも、口と口を付ける行為である人工呼吸のハードルは、かなり高く認識されがちです。
こうした理由で心肺蘇生の実施自体が拒まれてしまっては、救える命も救えません。いち早く誰もが救命行動に移れるよう、心肺蘇生の実施時には人工呼吸を省略しても良いという考えが広められているのです。
心停止のメカニズムは、心臓自体の異常が原因で血液ポンプの機能が損なわれ、血流による酸素供給がされなくなることが原因です。最も避けたいのは、酸素不足により心臓や脳の機能が停止することです。
血液内にはまだ酸素が残っているため、胸骨圧迫で迅速に酸素を能や心臓に送れば、救命率の低下を防ぐことができます。このとき心臓の動きを助けるためにAEDが求められるわけですが、AED起動までは人工呼吸をしなくても胸骨圧迫でかなりの効果があると証明されているのです。
人工呼吸用マスクは、安全かつ効率的に人工呼吸を行うための道具です。吐しゃ物などの逆流を防いだり、口から口へのウイルス感染を防いだりといった目的があります。
人工呼吸用マスクはAED収納箱に格納されている場合があり、コロナ禍も相まって需要が高まっています。