いついかなる時に誰が発症するかわからない心停止。その場に専門医が偶然居合わせる確率はほとんどありません。救急車をまったり、近くの病院へ連絡することはできますが、その時間に一般市民でも手当てができるように開発されたのがAEDです。特に、バスの中では長旅や疲労の蓄積から心停止が起きるリスクがあります。起きてしまった場合、救急車を待つことしかできません。移動中のバスは孤立しており救急隊の助けが得られにくい状態ですので、見つけ出すのに時間がかかってしまうのも事実。
バスにAEDを搭載することで、救急車を待つ間にでも一般市民が手当てをすることができます。
2015年3月31日に船橋市栄町内を運行していた京成バスの車内において、40代女性がバス車内で、席に座った直後心肺停止状態で倒れました。女性はバスに乗車するためバス停まで急いで移動していた様子。様子を見ていた別の乗客が運転手に連絡し、至急安全な場所にバスを停車。運転手は、無線で本社にAEDと119番通報を要請し、女性を床に寝かせて救命処置を開始。気道を確保し、意識と脈の確認を行いましたが、意識も脈もない状態でした。その間にAEDが到着し、即座にAEDを装着してAEDの指示に従いながら胸骨圧迫と人工呼吸を開始しました。7、8分後に救急車が到着し、救命隊員が処置を引き継ぎ、女性の意識は回復しないままでしたが、搬送可能と判断され病院へ搬送。その後女性は一命を取り留め、約1カ月の入院治療後無事に退院し、社会復帰されています。このように乗務員とバス会社スタッフの救命処置により、尊い命が救われました。
このケースでは、本社が近く早急な対応ができましたが、これが移動中でAEDがなかったら……。今後いつどのような状況で起こるかわかりません。まずは、バス業界にもAED搭載の必要性について理解していただけると幸いです。